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教員によるコラム

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※所属・役職は掲載時のものです。

2018年4月から大学院修士課程において助産師教育を開始します

2017/10/10

眞鍋 えみ子(看護学部 看護学科 教授)

出産の際に、生まれてくる赤ちゃんを最初に受け止めるのは、助産師の手です。生まれたときの記録が書かれている母子健康手帳には、その時の助産師の名前が記されています。

わが国最古の医書である「医心方(982年)」には、民衆の生活に関する記載にまじって、分娩・出産および育児に関する風俗が記されており、そのなかに出産の介助や新生児の保育を担当する女性が描かれています。このように助産師という職業は、古くから女性の仕事として「腰抱(こしだき)」「取上婆(とりあげばば)」や「産婆(さんば)」などと呼ばれて、人々から頼りにされ“お産の専門家”として活躍していました。そして、明治時代からは、国家資格となり西洋医学に基づく助産師教育が本格的に始まりました。

1948(昭和23)年には、保健婦助産婦看護婦法が公布され、「産婆」という名称が法律から消え「助産婦」と称されると共に、教育制度も変更され助産婦資格の取得には看護婦免許の取得が前提になりました。さらに1990(平成2)年には、法律の改正に伴い、「助産婦」は「助産師」となりました。現在、全国に約35,000人の助産師が働いています。その多くは病院や診療所で就業しています。また、地域で助産所を開業している助産師もいます。主な仕事は、妊娠・出産・産後を通したケアやお産の介助、産後の育児指導や家庭訪問などです。

助産師になるには、まず看護師になるための勉強をして、さらに1~2年間、助産師教育機関で学ぶ必要があります。その教育機関は197校(2017年4月現在)です。修学期間によって3つに分けると、4年間の学部教育のなかで助産師国家試験受験資格に必要な単位を選択履修し、看護師および助産師国家試験受験資格を同時に得る大学学士課程81校、1年間の教育機関である専修学校、短期大学や大学の専攻科・別科が81校、大学院・専門職大学院(2年間)35校です。大学院での助産師教育は、天使大学での専門職大学院学位課程(2004年)の開設に始まり、この13年間、増加しています。この傾向は、今後も続き、学士課程の看護教育に上乗せした教育に移行しつつあると思われます。

本学も2018年4月から看護学研究科看護学専攻修士課程(2年制)を開設する運びとなりました。本学研究科では、看護学研究分野(入学定員3名)と助産学実践分野(同3名)の2つの分野を設置します。助産学実践分野では、時代の流れに沿った医療環境の大きな変化に対応できる高度な知識・技術を有した助産師の養成を目指します。助産学実践分野のカリキュラムの特徴として、科目は、基盤科目と発展科目から編成します。臨床での高度な実践能力を修得するために、講義・演習・実習形式の授業を学習内容の順序性や系統性を考えて段階的に配置しています。

基盤科目は、保健師助産師看護師学校養成所指定規則に定める科目であり、授業では、助産学、医学やそれらに関連する薬学、栄養学、社会学、心理学などを学び女性の健康と支援方法、そして妊娠、出産に関わる女性の身体のしくみや機能、新生児の特徴などについて理解を深めます。そして、1年次の臨地実習では、病院や診療所で妊娠期から分娩期、産褥期、新生児期の実習を行います。妊娠期では、妊婦健診や保健指導を行います。分娩期の実習では、実際に出産の介助をする実習に加えて分娩時の産婦さんやその家族のケアや分娩後の母子のケアを行います。2年次には助産所において、妊娠中期から産後1か月まで約7か月の期間を継続して受け持たせて頂き、妊産婦さんのニーズや個別性、多様性を理解し、安全・安心・快適・満足なお産の実現に向けた助産師の役割を学ぶ継続事例実習を行います。これらの学習から助産師としての高い専門性を修得していきます。

発展科目は、助産学の応用・発展となる科目群です。その科目には、先端的教育研究拠点である同志社大学赤ちゃん学センターによる“赤ちゃん”に関する学問の最先端の研究知見を学ぶ「赤ちゃん学特論」や国際社会における母子保健やリプロダクティブヘルス・ライツ(生殖に関する健康・権利)の課題を知り、母子の健康をグローバルな視点から学ぶ「国際母子保健論」などの科目に加え、周産期における高度専門職として、緊急時の対応やエビデンスに基づいた最新の知識・技術を提供できる実践力を培うシミュレーション学習、小中学校での性教育や妊婦マタニティヨーガ教室の実習、母体・胎児集中治療管理室(MFICU)、新生児集中治療管理室(NICU)や助産所での実習を計画しています。

これらの授業は、臨床の最前線で活躍する多くのスペシャリストを講師として迎え、教育にあたります。そして、1学年3名という少数精鋭のきめ細やかな教育により、一人ひとりにあった教育環境や学習課題を提供します。

わが国の周産期医療の課題として、医療供給側では、施設数やマンパワーの不足、地域間格差が指摘されています。また、需要側では、出生数は少子化が進む一方で、晩婚化や生殖補助技術の進歩により、高齢出産や低出生体重児などのハイリスクな出産は増加しており、高度な周産期医療を必要とするケースが増加しています。このためハイリスク妊産婦や不妊がクローズアップされていますが、すべての妊娠・出産には母子の命が大きくかかわっています。一方、妊娠・出産は人の自然な機能でもあり、女性の産む力や赤ちゃんの生まれる力、母子の生きる力を引き出すことも大切です。すべての妊産婦と新生児の命に寄り添い、生命の誕生という神秘的なできごとを支える専門職としての「学び」のスタートラインに立ってみませんか。